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『金の草履』  (1)

 
Photo by  由美太っ♪


 体の奥から突き上げるような鋭い痛みがきた。

 麻子は歯を食いしばって低く呻き、この痛みの波に乗るイメージをつかもうとした。波のリズムの間隔が徐々に狭まり、ついに麻子は怒涛の波間に巻き込まれ、絞り出すように声をあげた。


 現実の自分を確認する間もなく、体の奥深く慈しんできた赤ん坊が光の中に誕生した。


 赤ん坊の力強い泣き声に、新しい命をこの体から生み出したという誇らしさと、今まで味わったことのない幸福感に包まれたとき、誰かが麻子の頬をつついた。

 


 「かあちゃん。・・・かあちゃん。」


 ささやくような智子の声が麻子を現実に戻した。
 彼女の頬に触れる手は、智子よりもう少し幼い元(はじめ)のものだった。


 生まれたてのずっしりした赤ん坊だった智子。
 今、目の前にいる智子は、おかっぱの前髪が伸びて額から目にかかり、その髪をかきあげながら心配そうに麻子の顔をのぞいている。元は感情に正直に麻子の頬をしきりになでる。

 

夢か。


 初めて生まれたての智子をこの手で抱いたときの感触が、まだ残っていた。

 

薄暗い壕の入口近くで、麻子は土の壁にもたれかかって夢をみていた。


 「かあちゃん、苦しそうな息をしてた。大丈夫?」

心配そうに小さな声でささやく智子の頭を右手でなで、左手で元の手を握りしめて頬ずりしながら、


 「大丈夫よ。ほらね。智子も元ももう少し寝なさい。智ちゃん、こっちおいで。」


 無防備で幸せな夢を反すうする暇もなく、麻子の中に子供を守って楯になる感覚がすっくり戻ってきた。



 戦が始まるまで、腎臓を患ってぱんぱんに腫れていた智子の足はすっかり細くなり、ふくらはぎのあたりに小さな筋肉をつけ始めていた。北に向かっての逃避行が始まった頃、しきりに足の痛みを訴え、歩き渋っていた智子が今は元と手を繋いで黙々と歩く。


 壕の中の狭い空間で智子の体を傍に引き寄せ、彼女の足をさすってやりながら元の頭をひざの上で抱え、粗末な抱っこひもで胸に貼りつく百合子の寝顔を確認して、麻子もまたまどろみの中に落ちていった






| 『金の草履』 | 00:05 | comments(3) | - | |
『金の草履』  (2)




夜のとばりが落ち始める頃、小さな非難壕の中で生ぬるい風が動きだす。


 ここを仮の宿として北を目指す人々が出発の身支度を整え始めると、明るい間、地を這うようによどんでいた空気も動き始める。じっとりと噴き出す汗がしたたる音さえ聞こえてきそうな空間で、壕の中でちぢこまっていた人々がそれぞれの単位にまとまって出ていく。


 単純に、窮屈に縮こまっていた空間から解放されるという明るさなど、ありはしない。あてのない旅を続ける人々は、明日への命をつなぐため、それぞれが真剣な想いで夜の闇の中に出ていこうとしている。

 行脚に向かう修行僧のような緊張感と、やっと手足を自由に動かせるというわずかな開放感だけが、まだ座り込んでいる麻子にも伝わってきた。

 太陽の眩しさが姿を隠し、放熱線が半円形を描いて消えた。あとに残った闇夜が、人々を吸い込むように壕の外に待ち構えている。

 

「姉さん、まだここにいるの?」


 小柄な年配の女性が壕の奥から這い出しながら、麻子に声をかけた。智子よりもう少し年かさの女の子を連れている。


 「あ、はあ。もう行きます。」


 おばさんはモンペについた土埃を右手で払いながら、


 「あんた、北に親戚でもいるの?見たところ、連れはいないようだけど。」


 おばさんは智子と元の顔を眺めながら、前歯の欠けた口を大きく開けてにっと笑った。


 おばさんのつやつやと黒光りした顔はこの非常時に似合わないほどふっくらとしていた。智子はおずおずと後ずさりして、麻子の後に隠れてしまった。元は珍しそうにおばさんの顔をじっと見ている。


 「坊や、名前はなんて言うの?」


 問われても、元はおばさんの目をじーっとのぞきこむだけで答えない。


 「あれまあ、そんなにあたしの顔が珍しいかね。そうね、そうね。」


 にっこり笑って元の頭をなでた。


 元は人なつこい子だった。じっと人の動向を観察する癖があるのは智子と同じだったが、
他人に対しての境界線をはっきりと持っており、その線からこちら側に招き入れてもいい人間か瞬時に判断した。
  そして、招待状を渡してもいい人物にはすぐに打ち解けていった。

 
 元は小柄なテルおばさんに笑顔を見せた。智子は弟の笑顔に安堵の色を浮かべたが、麻子の背中にしがみついたまま動かない。






| 『金の草履』 | 00:05 | comments(4) | - | |
『金の草履』  (3)


Photo by Twin Moon


 「うちの知り合いが北の半島のたもとの村におってね。そこを頼っていくところさ。あんた、北に向かったのはふう(幸運)があったね。南は大変なことになっていると聞いたよ。大きな声では話せないけどね。うちは途中で妹たちとはぐれてしまってね・・。」


 幸運。
 テルの言葉のふう(幸運)という響きが、まるで新しい世界から吹く風のように麻子には聞こえた。

 まだどこかにあるのかな。幸運なんてものが。今は見えないずっと先にそんなものが待っているのかな。だったら手繰り寄せるまで自分は歩き続けなければならない。この子供たちのために。 

 本島のものではない、離島訛りの残るテルの言葉にうながされて、智子より少し年長の愛子はきちんとお辞儀をした。

 
 「おばちゃん、赤ちゃん、おんぶする?」

 
 麻子は住み慣れた南の町を出てから、夜の間も百合子を自分の体から離したことがなかった。まだ眠っている百合子の体に抱っこひもを巻きつけていく。愛子が慣れた手つきで赤ん坊にひもををあてがった。

 「ああ、ありがとう。」


 いったん、麻子の胸からおろした百合子を愛子が抱きとめて、器用に麻子の背中に背負わせていく。

 
「愛子ちゃん、赤ちゃんの扱いが上手。ありがとうね。」


 麻子の言葉に、愛子が一瞬寂しそうに笑って、うしろの智子に声をかけた。


 「あんた、いくつ?私より小さいよね。名前はなんて言うの?」


 「・・・ともこ。八歳。」


 小さな声で智子が答えると、


 「そうか。うちよりよっつ下だね。」


 まっすぐな愛子の言葉に、長い間他人に対して笑顔を見せなかった智子が、はにかんだように笑った。

 


 麻子のように若く、小さな子供を連れている母親は、たいてい群れの中にいることが多かった。麻子も道を一緒に来たはずの夫の親戚たちとはぐれてしまった。それでも歩き続けてこの道をきた。


 生きていく準備もまだ十分に始めないうちに、坂道を荷車がごろごろと転がりだした。 
 転がっていく荷車の車輪が外れ、木の舵取り棒が行く先を見失って、そこらへんにあるものを巻き込み、すべて破壊していってしまう。ばらばらになった荷車は部品ごとに触れるものを壊して、今だに麻子の中で遠くにごろごろと音を立てていた。

 誰がなんのためにあの平和だった地に、壊れた車輪で鉄の雨を降らせたのかわからない。


 麻子には本当のところ、もうそんなことはどうでもよかった。

 突き詰めて考えたってどうにもならないことがある。麻子の乾いた視線の先にあるものは、自分の手に委ねられた三人の子の命を守ること。それだけが、麻子の生きる道だったし、それ以外のことなどなんの意味も持たなかった。


 




| 『金の草履』 | 00:05 | comments(2) | - | |
『金の草履』  (4)




壕で出会ったその日から、麻子はテルと行動を共にするようになった。

 テルは暗い顔を一切見せず、元と智子を明るい笑顔で包み、愛子はなにくれとなく赤ん坊の百合子の面倒をみた。

 
 人見知りをする智子が愛子に心を開き始め、束の間の家族のように子供たちが心を寄り添わせ始めた。あけっぴろげで遠慮のない明るい性格のテルが、昨秋のある日、すさまじい爆撃音の中からぬちびれー(命拾い)したさ、とぽつりと麻子に言葉少なに語った。

 あの日、はぐれてしまった妹の子、愛子が麻子の幼い子供たちを見るまなざしと、時折見せる寂しさのにじんだ表情は、あの爆撃音の中に埋もれていった彼女の幼い兄弟たちに向けられたものでもあった。にこにこと笑顔の影で、多くを語らないテルもまた、麻子に自分の妹の姿を重ねていたのだろう。

 

明るい間身を寄せる避難壕は人の手で掘った人工の洞穴や、元々崖下のようなところにあって草で覆い隠されてしまう墓穴のような小さな洞穴、また大きな自然壕のようなところと様々だった。


 小さな墓穴のような洞穴を目にするたびに、麻子の心の奥でチリチリといつまでも消えない火花がくすぶり続けた。

 

 


 突き出た岩盤の真下に、ぽっかりといくつも長屋が並んだような墓地。

 年に何度か人の手が入らなければ、ぼうぼうに伸び放題の雑木林のなかの小さな道を、草を踏みしめていったところに夫の家の墓があった。

 初夏の日差しと草の匂いに包まれて額の汗を拭いながら重箱を運んだ、ほんの数年前の穏やかな休日。


 崖のような岩盤の軒の上から、自然の中に自生するサルスベリの枝が腰を曲げ、お辞儀をするように崖下の小さな広場に顔をのぞかせている。サルスベリの花の色は、夏の到来を告げていた。


 墓参りで訪れたこの場所で、夫は持参した鎌で垂れさがる琵琶の葉やねむの木の細い枝葉や雑草をきれいに刈り取った。

 可憐な花をつけるサルスベリの枝だけはそのままに、夫は幼い子供たちを桃色の花の下で代わる代わる高く抱き上げた。


 わんぱくな元は隣の墓所との境の塀によじ登り、


 「りょうー!ここまで上ってこーい!」

とすぐ下の弟、了を呼んだ。


 夫、聡の面影にそっくりな小さな了は、父の腕に抱かれたまま下から兄を見上げ、


 「にいにい、ヤールー(やもり)がいる!あー!にいにい、あれ取って、取ってー。」


 と、野生の木になる濃い紫色の木の実を元にねだった。

 聡が元に声をかける。


 「元にいにい、気ぃつけろよ。」


 元は父と弟に向かってにこっと笑い、器用にするすると木の枝を伝って岩肌を登っていった。了にねだられた桑の実を、ポケットの中で押しつぶさないようにそろりそろりと下りてきて、弟の手に乗せてやった。

 「わー。にいにい、だいじ、だいじー。りょおのだいじー。」

 まだまだ幼い兄は、掲げた桑の実を一粒つまんで弟の口に、一粒を自分の口にぽいっと放りこんで笑った。

 姉兄弟は、墓の前に仲良く腰をおろして桑の実を口に運んだ。細かいひげの生えた紫のつややかな小さな木の実は、甘酸っぱい初夏の思い出を残した。


 聡が片結びにした緑色の草の魔除けを作り、それぞれの子に与える。柔らかい風に吹かれて、切りそろえられた智子の前髪が揺れた。


 小高い丘の上の墓を背にして振り向くと、眼下に泉崎の村とその先に広がる静かな海が見えた。


 サルスベリの桃色の花の下。夫がいて、子供達の笑い声の中に了がいた。麻子は当たり前のようにそんな光景を穏やかに見ていた。

 






| 『金の草履』 | 00:05 | comments(2) | - | |
『金の草履』  (5)


Photo by Twin Moon


秋の始まりのある日、大きな爆撃音が町全体を揺るがした後、しばらくして了は小さな体を病の床に臥した。


 戦地に赴いた夫不在の日々。
 ありとあらゆるすべてのものが焼け落ち、なにも無くなった南の町から、命からがら親戚の家に身を寄せたその片隅で、了は日に日に衰弱していった。


 生まれてから決して丈夫とはいえない了の小さな体にのしかかる病。長引く病状を軽くしてやる手だてもないまま、重苦しく時間だけが過ぎていった。

 その朝、麻子は了の顔を拭いてやってから二人の子を呼んだ。

 「智子、元。了の顔を見てごらん。ほら、きれいな顔をしているでしょう。」


 智子が震えを抑えた声で言った。


 「了、とうちゃんにそっくり。」


 病の子を診てくれる医師とていない、ましてや薬などない、空を仰いでも誰も手を差し伸べてくれるはずもない現実。なすすべのないまま、麻子の心はちぎれそうだった。


 目を閉じたまま、了が消え入りそうな声で言った。


 「にいにい。・・・手ぇがさむい・・。手ぇがさむい。」


 元が弟の小さな手を両手で包み、温かい息を吹きかけてやった。何度も何度も。


 ふっと目を開けた了は兄と姉を見た。それから麻子の耳元にしか届かないような小さな声で、


 「かあちゃん・・・。薬飲みたいよぅ・・・。」


 喘ぐような息の間からそうささやいて、再び了は目を閉じた。

 


 あの日から元の声が出なくなった。

どんなに声を出そうと口を開けても、のどの奥からはひゅうひゅうと乾いた空気が漏れるだけだった。


 麻子には、あのサルスベリの花の下で桑の実を食んだ場所にひとり葬られた弟が寂しくないようにと、幼い兄は自分の声を小さな弟の亡骸に寄り添わせたように感じて仕方なかった。


 ちぎれた心から噴き出した血しぶきの重たい感情。
 噴き上がった赤黒い血潮がそのまま降りかかって、麻子の体を隅々まで重たい色に染めた。


 つい今しがたまでこの手の中にあった了の命。
 子供を死なせてしまったという焼けつくような想い。自分を責めても責めても、答えの見つからないうつろな想いと深い哀しみに支配されて、心は焼け野原をさまよった。

 そして、麻子に残ったのは日に日に形を変えていく、生きるという現実と、三人の子の手の中にある未来を守ることだけ。

 


 子を失った悲しみを認識する間もなく始まったあてのない旅。周りに促されて道しるべもないまま歩き始めた。次第に道は険しくなっていった。

 夜の間、何が待っているのか見当もつかないまま北を目指して歩いた。命を繋ぐ食べ物を探して森の中をさまよった。


 元と智子はくーびの実を袋にいっぱい取ってきて、水分代わりに腹を満たした。もうすぐ一歳になる百合子の口にも入れてやった。


 物心もつかないうちに母の背中にくくりつけられて、戦の中を逃げ惑ううち、百合子はいつしか赤ん坊らしく大きな声で泣くことをしなくなった。背中で麻子の鼓動を通して母の感情を読み取るのか、泣くときはヒックヒック・・、と小さな声でしゃくりあげるように泣いた。


 智子がくーびの実をつぶして百合子の口に入れてやると、「ンマ、ンマ・・」としゃぶるように可愛らしい声をあげた。


 「かあちゃん、百合子がおいしいって言ってる。そうか、おいしいの。百合子、いい子だね。」


 百合子はいい子だ。大きな声で泣きもしない。智子も元も三人ともみんないい子だ。

 麻子は心の底からそう思った。この状況の中でも、幸せと思える瞬間をこの子らからもらっている。もう誰も死なせはしない。絶対に一人として手放すもんか。

 






| 『金の草履』 | 00:05 | comments(10) | - | |
『金の草履』  (6)


Photo by 由美太っ♪


 夕方から姿の見えなかったテルが、愛子と連れだって息を切らして戻ってきた。二人とも土まみれになっている。


 「麻ちゃん、左奥のほうにずっと行って、海に下りていくところに畑があった。まだ芋が収穫されずにあったから、盗ってきたよ。あんたも行って掘ってきなさい。食べておかんと。」


 「人の畑から?テルさん、ひとの物を盗むんですか・・・・?そんなこと・・・・。できません!」

 
 麻子の答えにテルは一瞬きょとんとした。が、次の瞬間、目を吊り上げてすごい剣幕で麻子を怒鳴った。

 
 「なんだって?今なんて言った。盗めませんだって?あんた、ここは女学校じゃないんだよ。いつまでお嬢ちゃん気分でいるんだい。麻ちゃん、あんた、つくづくどんくさい子だね!ぐずぐずしてたら、弾に当たって死んでしまうかもしれないんだよ。食べなければ体が弱って、黙っていても死んでしまう。

これまで何人も、弱って歩けなくなった人が置いて行かれるのを見て来たんじゃないのかい?」

 
 麻子が答えようとしたそばから、テルが続けた。

 
 「は、あんたはいいさ。仙人のように食べなくても生きていけるって言うならね。でも元や智ちゃんはどうなる?百合子はどうなるんだい?麻ちゃん。いいかい?今は、生きて地獄の中にいるんだよ。この地獄がいつまで続くのかもわからない。持ってきたものだってどんどんなくなって、みんな飢えてる。だれということはない。今ぬちびれえ(命拾い)してるどんな人だって、明日はどうなるかわからない。あんたはね、あんたの子供はあんたの手で守って行くしかないんだよ。甘えたことを言ってるんじゃないよ!うちはこの愛子と自分を、この体を張って守っていく。こんな地獄の中では誰だって他人に恵むものなんかありゃしないんだよ!人には頼れないんだ。盗まなければ生きていけないときだってあるんだ!」

 
 厳しくテルに諭されている間、智子が麻子のそばに寄ってきてうつむき、両手の爪をパチパチと小さく鳴らしてうなだれた。母がいつも明るいテルに厳しく怒られている。テルの言葉を麻子を通して智子が小さな体で受け止める。
 
 感受性の鋭い智子の手を、愛子が素早く自分に引き寄せた。
 (智ちゃん、かあちゃんは大丈夫だから。心配しなくていいからね。)
 (愛子ねえねえ・・。)
 一番年長の愛子は子供の居場所を本能で知っていた。
 


 テルの厳しい言葉は麻子の胸にことごとく突き刺さった。 
 生きていくために盗る。善良な人間が生きていくために小悪党になる。
 正しき道を行け、と教えられてきた。今は明日に向かうために、人のものを盗らなければならないと教えられる。明日を迎えるために・・・。


 この中の一人一人に明るい日々があった。だれにも、暦をめくれば確実に明日という日があった。ついこないだまでは。今はテルが言うように、生きて地獄の日々。めくった暦がそのまま今日で止まってしまうかもしれない。いったい何枚暦をめくれば、あの穏やかな日々が戻ってくるというのか。


 厳しい言葉とうらはらに、テルは麻子の手を握りしめた。

その手の感触に、麻子は早世した姉の八重を思い出した。ことあるごとに麻子を叱責した八重の声がよみがえった。


 「麻子!まったくあんたは!母さんが甘やかして育てるからこんなろくでもないもんになるんだ!学校の勉強が出来ればいいってもんじゃないんだよ。ほんとに世間知らずのろくでなし。布団も畳もカビが生えてそのうち腐ってしまうでしょうが!」


 女学校の制服のスカートに水を打って布団の下で寝押ししていたのを八重に見つかったときのことが、くるくる回る灯篭の影絵のように思い出された。

 八重は麻子にいつも毒舌を吐いた。麻子は、八重が亡くなってからも、ずっときつい姉だったと思ってきた。


 「麻子、あんたは大きくなってもろくなおとなにならないね、きっと。」


 その通りかもしれない、姉ちゃん。私はろくでもない母親だ。


 (だったら、麻子。今日から、今の今から、しっかり母親になりなさい。)


 テルの力強い手の感触を通して、八重の声が聞こえたような気がした。





| 『金の草履』 | 23:27 | comments(0) | - | |
『金の草履』  (7)




その日の夜空は上陸してきた敵が、いよいよこの島の懐深くに攻め入ってきたと、避難民のあちこちから漏れ聞く噂が本当のことのように、爆撃弾が暗い空を橙色や金色の火の玉で彩った。

 「あんたらも早く次のところを探した方がいいよ。こないだの湾のところから北と南に分断されて、南側にいる人らはもう北上出来なくなってるって話だよ。」
 
 新しい情報をテルにささやく人がいた。
 
 そのすぐそばから、坊主頭のにいにいが
 「あい、おばさん。ずっと南から逃げてきた人がそのあたりで木に引っ掛かってる人の腕を見たってよ。」
 
 どんな状況が待っているかわからない。でも、そんなむごい光景を子供たちの目に焼き付けたくない。テルと麻子も粗末な荷物を抱えて、子供らと先を急いだ。

 愛子が智子の手を引き、元の手を麻子とテルがしっかり握ったまま、海が近いことを示すフクギの木の中でダダダダッ、ヒュンヒュン・・・と遠くから聞こえる戦の音を見上げた。

 南の山の向こう側で炸裂する光の尻尾が、しばらく身動きできず、空を見上げてたたずむ六人の姿を浮き彫りにしていた。

 

夜明けも近い。


 どこか、身を隠す避難壕を探して行かなければ。夜が明ければ爆撃機が飛んでくるかもしれない。


 こんなときでも麻子には不思議と恐怖心は起きなかった。
 感覚が麻痺してしまっているのだろうか。いや、そうではない。生きていかなければならない。空腹と闘って命を繋ぐ戦と、敵の砲撃から逃げて逃げて逃げ伸びて、命を守る戦。その両方に立ち向かっていかなければならない。恐怖を感じている間がなかったのだ。

 東の空から太陽が姿を見せる前にどこかに隠れなくては。

 

林の中の奥深く、ようやく麻子たちは大きな自然壕に辿り着いた。
 入り口から少し下っていくごつごつとした岩肌を伝って、その下方に大きな口がぽっかりと開いており、その入口は亜熱帯地方特有の大きな木の濃い緑色の葉に覆われている。ずいぶん深い自然の壕のようだ。
 
 林の奥ももうすでに明け方の色に染まっており、自然が目覚める時刻を示している。  


 先ほどまでの爆撃音にたくさんの人々が身を潜めている様子だった。入口近くの人が新たな侵入者を見上げて、ここは満杯だよというような表情を見せた。それでも引き返すわけにはいかない。


 麻子は百合子をおぶったまま、智子との間に元を挟んで、傍にぴったり引き寄せた。テルと愛子は反対側の隙間に身を寄せた。


 大きな壕の中に入ってしまうと、入口を覆いかくすような草と枝葉でふたをされて、日差しが眩しくなってくる季節というのに薄暗闇が広がった。


 昼間であろうと夜であろうと、暗がりの中に逃げ込むと安心感があった。
 平和な時を過ごしている頃には、闇には得体の知れない恐ろしいものが潜んでいて、決して足を踏み入れられない場所だった。今は自分を脅かす何者かから、漆黒の衣を一枚まとって体を遮ってくれるような安堵があった。

 麻子はやっと収まった空間で、自分と三人の子の上に闇の衣を被って息を整えた。

 これで少しだけ目を閉じることができる。麻子がそう思ったときだった。


 壕の奥から言い争うような低く野太い男の罵声と、若い女の悲痛な声と赤ん坊の泣き声が聞こえて来た。一瞬のうちに入口付近にいた麻子の回りの人々にも、緊張が走った。押し問答の末、声を押し殺した女の悲痛な嗚咽がひたひたと伝わり、赤ん坊の声が途絶えた。

 壕の中に響いた若い女の声は、誰の耳にも痛みを伴って聞こえた。






| 『金の草履』 | 22:57 | comments(0) | - | |
『金の草履』  (8)


Photo by Twin Moon


 

ここで一体なにが起こっているのか。壕の奥に、暗闇よりも暗く恐ろしいものがうごめいている。麻子の体がぎゅっと硬くなった。


 男の声は壕の中の人々に沈黙を強く強要した。まもなく暗がりの奥から品定めをするように、青白い顔をした日本兵が避難民の間を縫って入口付近まで出てきた。怯えを隠せない避難民と明らかに違う、もうひとつの民族の顔。

 麻子はこれまで見たこともないような冷たい視線をのっぺりと投げかけられ、背筋に震えを感じた。初めて芯から覚える恐怖に、足の裏に針で刺すようなチクチクとした鋭い痛みが走った。


 その男は麻子の前で立ち止まった。


 「赤ん坊を連れているな。その赤子をここに差し出せ。」


 なにを言っているの、この人は。


 「なにをぐずぐずしている。訳もわからず泣く赤子のせいで、ここが敵に知れてしまう恐れがある。その赤子の口を塞げ。お前が自分で出来ないならば、赤子をここに出せ。この坊主もお前の子か。」


 友軍の兵士であるこの人は、同じ国の味方のはず。同じ側に立つはずのその男の口から放たれた言葉から腐臭がした。麻子は胃のあたりにぐっと吐き気を覚え、壕の中の暗がりにとてつもなく息苦しいものを感じた。


 元は怖がる様子もなく、薄茶色い帽子を被った男をまっすぐ見上げている。麻子の背中で百合子がくすんと小さな声をあげた。泣くな!百合子。


 「この子は泣きません。息子も声の出ない子です。」

「ほう、泣かない赤子に唖(おし)の子か。唖の子供が声をあげて叫んだら、その泣かない赤子も大声で泣くのだろうな。我々はこの地の民のために闘っておる!大声で泣かれる前にその赤子を差し出せと言っておる!」

 
 どうしようもない状況の中で、了を失った麻子は、今子供の命を守るためだけに生きていた。この人は救うべき民のための戦の前に、百合子の命を差し出せというのか。


 この冷たい目をした人が守ろうとしているものがなんなのか、私にはわからない。けれど、百合子の命がそれより小さいものだとは到底思えない。
 この子の握りしめた手の中にあるものは、誰にも計り知れないほどの大きなものなのだから。だれにもそれを握りつぶすことはできないはずだ。


 私はろくでもない母親かもしれない。でも、守れない命なら、最後までこの子たちの前にこの体を投げ出すのが今の私に出来ること。


 麻子の回りの人々の中にも幼い子供を連れた者はいたが、その男は執拗に麻子に迫った。もしかしたら見せしめの警告のつもりなのかもしれない。


 壕の入口付近で麻子の回りに座り込む人々は、このやりとりに緊張した視線を足元に落とし、怯え、息を潜めている。


 夜はとっくに明けており、木々の間からこぼれる日差しが智子と元の表情を映し出す。智子は一文字に唇を結び、子供なりに恐怖と闘う。元は変わらず男を見上げていた。


 「これは上官殿のご命令である。この戦の中に於いて、上官殿のご命令は絶対である!赤子の声が漏れては一大事に繋がる恐れあり!きさま!われらに楯つくか!赤子が泣かぬというなら、すぐさまここに差し出してみせろ!」


 この命令に従って生き長らえて、一生地獄に繋がれて生きていけというのか。腐った匂いが充満して麻子は呼吸が苦しくなった。


 「ご命令とおっしゃるなら、この場所が敵に察知できぬよう、私たちは遠くへ参ります。私に子の口は塞げません!どうか、お許しください!」


 非情な罵声を浴びせる冷たい目をした男の口元に、ほんの一瞬感情が宿ったように見えた。


 「強情な女め。赤子が泣き叫ぶ前にここから出て行け!」


 麻子のいちかばちかの駆け引きが功を奏した。みぞおちの奥で胃の真ん中をぎゅっと握りつぶされるような感覚を覚えながら、内臓全部にふたをするように吐き気をこらえた。
 早くこの場から逃れたい。

 智子と元をうながし麻子が立ち上がった瞬間、反対側で身をちぢ込めて声を押し殺していたテルがなにか言いたげに唇を動かそうとした。麻子はすばやく目でそれを制した。


 この人を巻き込むわけにはいかない。






| 『金の草履』 | 22:49 | comments(8) | - | |
『金の草履』  (9)


Photo by Twin Moon

智子と元を、先ほど下りて来た岩肌に這い上らせた。背中の百合子の後からだれも追ってこないことを確認しながら、麻子もごつごつした岩の間から這い出した。

 きりきり痛む胃のあたりを左手で押さえながら、元の手をしっかり握り、今しがたまで潜んでいた壕が見えなくなる場所までとにかく進んだ。
 
 黒いものが息づく伏魔殿のような洞穴に、今も不安そうに縮こまるテルと愛子を想い胸が痛んだ。

 智子が心細そうな顔をしている。

 この恐ろしい戦争の世で、大人も子供もなく逃げ惑い、日々笑顔を失っていく子供たち。
 自分の内面を押し殺し、感情を外に出さなくなった智子の、あの笑顔を壊したくない。平和な時間はきっと取り戻せる。智子や元がくったくなく笑うときは必ずまたやってくる。そのときに、子供たちの心に一点の曇りもあってはならない。

 麻子は智子の肩を抱き寄せて言った。

 「智ちゃん。さっきのおじさんは怒ったふりをしていたけど、あそこの場所は狭くて人がいっぱいだから、最後に入ってきた人はもっとほかの場所を見つけてくださいって言ってたんだよ。わかる?」

 さっきまでの緊張がほどけて、智子はみるみる泣き顔になった。

 「かあちゃん・・・。かあちゃん・・・・。でも、でも・・。愛子ねえねえとテルおばさんは?なんで一緒に来なかったの?」

 しゃくりあげる智子に麻子は笑って言った。

 「テルおばさんたちには赤ちゃんがいないさぁ。かあちゃんの背中でね、あの狭い場所で百合子が泣き出しそうになってたんだよ。あのおじさんはね、赤ちゃんが窮屈で可哀想だからもっと広いところに行きなさいって、わざと怒ったように言ってたんだよ。もっとやさしく言えばいいのにねぇ。」

 母の言葉に少し安心したのか、大粒の涙と一緒に感情を洗い流した智子の顔が少し明るくなった。

 「智子、大丈夫。夜になったらテルおばさんのことだもん、ともちゃ〜ん、はじめ〜って、智ちゃんたちを探しにくるさぁ。だからどこか隠れるところを探そうね。智ちゃんも元もわかったね。」

 麻子は自分に向かってつぶやいた。(必ずまた会える。)


  

ずいぶん時間がたったように感じたが陽はまだ浅かった。状況とうらはらに柔らかい木漏れ日が林の中を行く親子連れに降り注ぐ。なかなか麻子たち四人が潜り込めるような隠れ場所が見つからない。

 南国の太陽は春の訪れと、初夏の区別をさほど隔てることなく明るく放物線を描く。林を抜けて、なににも遮られることなく太陽の光を浴びたとき、麻子の中でなにかが弾けた。

 

ええい!もうどうにでもなれ!

 

亜熱帯の樹木がうっそうと生い茂る壕のある林から、小高い丘の斜面を下ってしばらくいくと、潮の匂いがした。平坦な明るい道をアダンの間をすり抜けて海に向かった。

 緩やかなカーブを描く海岸線に辿り着き、だれからも、なにものからも隠れることなく四人はゆっくりと歩いた。智子と元が波打ち際で水と戯れる。麻子たちの他にひとっこひとりいない砂浜。こんな自由な時間はいつぶりだろう。


 もし今敵機が頭上に現れたら、間違いなく攻撃されて死ぬだろう。

 この平和な風景が、次の瞬間には命を失う景色に塗り替えられる背中合わせの理不尽さ。この国のために子を殺せと、この国の兵に命じられる理不尽さ。


 今は生きて地獄。テルの言葉がひしひしと重みを持って麻子の上にのしかかった。

 

とうちゃん、ごめん。私、とうとう守れなかった。最後までろくでもない母親だった。

 穏やかに晴れた空を仰いで、夫の顔を思い描いた。涙は出なかった。

 

どのくらい時間がたったのだろう。帯を解き百合子をおろして、四人でモクマオウの林の中に座って海を眺めた。


 白い砂浜。青い透き通った海の色。寄せてまた返す穏やかな波音。耳の奥深くに、この波の音を記憶しておこうと麻子はぼんやりと思った。

 母と子に初夏の風が吹き、モクマオウの針のような葉がさらさらとこぼれた。


 この美しい島で、戦が繰り広げられているとはとても思えない静かな時間。


 「きれいだねぇ。」

 くすくす。だれかがおかしそうに笑った。


 「かあちゃん・・・。元が・・。」


 智子が麻子の袖を引っ張った。


 くすくすくすくす・・。声を出して笑ったのは元だった。


 「元。あんた、声・・・。」


 麻子の言葉が言い終らないうちに、


 「かあちゃんの顔・・・、さーるーみたい。」


 元がおかしそうに声をあげて笑った。

遮るものの何もない、昼間の明るい陽の下で久しぶりにはっきりと見る母の顔。黒く土ですすけて汚れ、まるで野猿のようだ。元の言葉につられて智子も笑った。

 
 「ほんとうだ。かあちゃん、さーるーみたい。」


 兄たちが笑うそばで、小さな百合子が面白そうに目を丸くして、明るい声をあげた。


 自由になった小さな手をしきりに動かし、踊るように笑う。


 「智ちゃんだって、さーるーみたいだよ。」


 「あははは。ねえねえもだ。かあちゃんも。はじめーもだ。」


 元が笑い、智子が弾けたようにつられた。あはは、あははは。

 

「そうだ。かあちゃんはさーるーだ。智子と元と百合子はぐまさーるー(子猿)だ。」

 
 麻子は三人の子供にそう言って、鼻の下を伸ばし、おどけた顔を作って、


「キーキー。ほら、元、さーるーだ。智ちゃん、百合子、さーるーだ。」


 言いながらモクマオウの木の下で踊った。


 ぼろぼろの母猿を真ん中に三匹の子猿たちが踊った。キャッ、キャッ。キーキー。


 そうだ、麻子。きょうから私はさーるーだ。子猿を抱えた母猿だ。猿のように生きていけばいい。どうなってもいいなんて・・・。いいわけない。


 今、明るい静かな浜辺で、元の声が戻った。


 (にいにい、かあちゃんのところに戻ってもいいよ。)

 






| 『金の草履』 | 22:46 | comments(0) | - | |
『金の草履』  (10)



Photo by  rose bud


麻子たちの生きる旅は続いた。
 
 夕闇が迫ると食べるものを探して、ときには百合子を背中からおろして智子に預け、こっそり人の畑に忍んでいく日もあった。


 「おい!おまえ!ナーファンチュだな!」


 南からの避難民が畑を荒らすようになって、見張りを立てる村もあった。
この警戒網に引っ掛かり、切れた唇から血を流し、顔を赤く腫らして戻る日もあった。

「かあちゃん。血がでてるよっ。」
 元が麻子に飛びついていく。智子が心配そうなまなざしで手ぬぐいを母に差し出す。
 麻子は元を抱きしめて
 「かあちゃん、つまづいて転んでしまったさぁ。」
 「なんでもないよ、大丈夫。」
 麻子の口癖になった。

 麻子は野猿になり、子猿たちの口に入るものを探し、野山を這いずり回った。その攻防とて麻子には苦痛ではなくなった。私は猿だもの。生きていくためには盗るしかないときだってあるんだ。

 



 低く垂れこめた厚い雲の間から、ゴロゴロゴロと雷鳴が聞こえた。ピカッ、ピカッと暗い空に時折稲光が走る。


 深い山の中に雨の匂いが満ちた。
 雨は土に滲み込み黒々と匂い立ち、ますます強くなっていく。乾いた木の皮に縦模様を描いていた雨足がみるみる激しくなり、麻子と子供たちを濡らした。

 森の木々を強い雨が打ちつけ、肉厚な葉がばらばらばらと音を立てた。

少しでも雨をよけられるような場所を探して、麻子たちは入り組んだ森にさまよいこんだ。


 「かあちゃん、あっち!」


 智子が指し示す方向に、ひときわ大きな木が枝葉を広げて四人を迎えるように立っていた。その木の根元は複数の幹が絡まるように重なり合っており、その隙間に木の室がぽっかりと姿を現した。


 急いで室に逃げ込み、濡れたねんねこから百合子を下ろした。ずぶ濡れの服を脱がせ、絞った手ぬぐいで子供たちの濡れた体を拭いていく。


 室の中は案外湿り気もなく、広がりがあった。乾いた場所に親子でぴったりと寄り添った。麻子の裸の胸に百合子が肌を寄せて温もりが戻った。小さな百合子の心臓の音が麻子にトクトクトク・・と響く。


 森のどこかで花が咲いているのか、雨に打たれて花びらが震えて、かすかに甘い香りが麻子たちの元に届いた。

 

二昼夜、この深い森の中の室で雨をやり過ごした。

 大きな木の股の中は安らぎの宿となった。室の入口には苔むした岩が二つほど並んでいて、この雨でぬめりのある光沢を見せている。まるで緑色の絨毯に覆われているようだ。
 室の中に雨が跳ね返らないように、ちょうど屏風のような役割を果たしており、表から目立たないような造りになっていた。

 だれにも見つからないこの宿で、少しだけでいい、ゆっくり眠ろう。


 室の中で一か所、ぴちゅん・・、ぴちゅんと雨水を滴らせている場所があった。智子と元は落ちてくる水滴を代わる代わる口を大きく開けて受け、時折顔を濡らしては面白そうに笑った。


 子供たちに笑う力がまだ残っている。ああ、よかった。
 テルと愛子はどうしているだろう。
いつまでこの逃避行は続くのだろう。どこまで行けばいいのだろう。

 どっと疲れを覚えて、麻子は深い眠りの淵に沈んでいった。

 


 





| 『金の草履』 | 15:14 | comments(2) | - | |
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