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『フォーチュンクッキー』

(やれやれ、とりあえずは無事に年度を越せそうだな。)
営業一課の課長、古田氏は細い目でフロア全体を見渡した。相変わらず目つきは悪い。
周りに「ガラガラヘビ」と疎まれ、極悪非道なやり方で狙った獲物をじわじわと絞り上げていく。



女子社員が差し入れの菓子の礼を述べにきた。
(おみくじつきクッキーか、そんなに喜んでもらえるとはな。表向き社交辞令ってとこか。)
一礼とともに華やかな波が自分の周りから引いていくのを感じる。

(ふん、まぁいいさ。とりあえず安上がりなご機嫌伺いは成功したようだ。)
昨夜、中華街の入り口で中華菓子を売っていた親父の不思議な目を思い出した。
「人間の心はあったかいもんヨ、ダンナさん、ジブンをよく見てネ」「クッキーはあったかい心で食べるトキうまいのヨ」

(ふん)古田氏は半開きの冷たそうな目を細め、能面のように口の端に意味のわからない微笑を浮かべている。
それがいっそう爬虫類のような風情をかもしだす。

フォーチュンクッキーは未来を占う。格言の形で物事を諌める。

小さな紙切れが無造作に段田氏のパソコンの上に置かれている。
『試さずしてすでに明白にわかることも世の中にはあるものだ』『危うきに近寄らずとも、危険を察知するのも力のうち』(子供っぽいやり方しやがって。)

古田氏はかまわずクッキーをつまんで口に入れた。甘いバニラともバターともつかない香りと甘み。ほどなく紙片は現れた。

『今、この時、あなたは真の姿を取り戻すでしょう』(なんだ、これは。たわいのない。)
その瞬間、吹かれたこともないような強風が古田氏を襲い、からだが浮いたような感覚を覚えた。強風が彼を捉える。

渦に巻かれながら、古田氏は周りの部下たちが冷めた目で自分を見ているのに気づいた。その目は古田課長自身の目とそっくりだ。
部下たちは全員その手を止めて、渦に吸い込まれていく古田氏を見上げている。
(おい!なにを黙って見ているんだ!この状況をなんとかしろ!)

古田氏を渦巻く強風は、透明のガラスに遮られるかのように、どこかへ彼の存在そのものを、この空間から引きちぎっていった。

フロアはなにもなかったように、あたりにはオフィスの音が戻っている。
古田氏の机のあった位置の空間に紙片がはらりと落ちていた。

『蛇は去った、住むべき世界へ。荒野の砂地へと。』

古田課長の表情、姿形がどんなふうだったか、今はだれも思い出せない。
爬虫類のような目つきの人物など存在していた証がないのだから。

なにせ彼は素晴らしく造りのいい能面をかぶったまま去っていったのだから。
どこへ行こうと、心配はない。



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ありがとうございました!



| - | 07:17 | comments(1) | trackbacks(0) | |
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| - | 07:17 | - | - | |

 フォーチュンクッキー、これ、初めて聞いた。
コストコならあるのかな。
 日本の前餅が原型らしいが、これもまったく知らない。
 それなら、いっそのこと、創っててしまえ。    PEARちゃまお願い、なんちゃって。
| シャンプージャン | 2007/11/01 10:30 PM |









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