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『琵琶の音色』 (2)

 正確な記憶が残っていない。演目は確か、「平家物語」の一幕だったと思うが、「本物の琵琶法師」の語りには迫力があった。





 ぽつぽつ集まった十数人の客を前に、媚びるでもなく、威張るでもなく、静かに、
「では始めましょう。」
 という言葉とともにステージが始まった。

 琵琶の音色と彼の声が響き、一瞬、闇の中に自分の心が吸い寄せられるような気がしたのは、単なる錯覚だろうか。これも遠い記憶だ。

 実際のところ、日本の文化とクロスオーバーする位置づけに生まれ育ち、生活している私にとっては、異文化に触れる初めての瞬間だったにちがいない。今風にいえば、アウェーでの初めての体験。

 歴史の1ページを伝統として受け継ぎ、語り継いできた彼ら、琵琶法師と呼ばれる人にあったのも初めてであれば、琵琶という楽器を見るのも、音色を聴くのも初めてだったから、まだ十七歳だった私の柔らかい心に琵琶の音色は響き、あふれ、沁みていったのだ。

 平家物語は色に例えるとダークな色合い。
 哀れな運命と命の重さをうたうが、暗い底から見えてくるものもあるのだろうか。
 「のっぴきならないことになりそうだぞ」そんな想い。

 窓の向こうの暗闇のはてに、山並のギザギザが黒に塗り重ねられて、漆黒の微妙な色合い。琵琶の音とのハーモニー。

 寒い季節であったから、帰途に着くころには、我々みな氷の世界の住人。
 暖房の記憶もなく、あったのは板の間の硬い冷たい感触だけ。
 琵琶の音色に圧倒されて、後はあまりよく覚えていない。

 宿に戻って、温まりながら聴いた小椋桂の深い甘い声と、モノクロのレコードジャケットの写真が、対照的にあのときの残像となって残っている。
 十七歳のとっても大切な思い出。

 本物の琵琶法師の語りを生で聴いたのは、後にも先にもこれっきりだが、「ほんもの」とはどういう意味だったのだろう?

 突如として私によみがえった、遠い日の感動。
 人間の記憶とは、過去も現在も含めて、突拍子もないところからやってくるものだ。琵琶の音色など忘れかけていたというのに。
 きっと過去からの小さな贈り物として、小舟にでも乗ってやってきたのだと、そんなふうに思っている。

 その夜、私の心の泉から、激しくも哀しい琵琶の音色と彼の声があふれ出て、この空間を満たしていった。
  



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ありがとうございました!


| - | 17:55 | comments(1) | trackbacks(0) | |
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| - | 17:55 | - | - | |

こんばんわ、今日アラシの事を記事に書いたらターゲットにされたようです^^;
負けずにダブルポチ!
| Sepic Blue | 2007/11/24 7:30 PM |









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