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第21回琉球新報児童文学賞  『ステラ』 (1)

nature.jpg
Photo by 由美太っ♪


『ステラ』


 

アスレチック公園を小走りに走りぬけるとき、ランドセルの中でお手玉がおどるのがわかった。


 ぽんぽんしゃりしゃり、あづさの背中で赤や黄色のお手玉が楽しそうに笑う。わかったわかった。あとでいっしょに遊ぼうね。


 公園の出口近く、ひらりとさくを飛びこえると道のすぐ前にあづさの家はあった。車が来ないか用心深く左右をのぞいて、いちもくさんに道を横切り玄関に飛びこむ。


 「ただいま〜。」

 
 いつものように声をかけて玄関のドアを開けようとした。


 あれ?開かない。お母さん、おでかけかな?

玄関横の小さな中庭にまわって、あづさは大きな声で中に声をかけた。


 「おばあちゃん、ただいま〜。お母さん、おでかけ?玄関が開かないよ。」


 あづさが帰ってくるこの時間、おばあちゃんは廊下をへだてたリビングのすみの椅子に腰かけている。陽あたりのいい中庭をながめているおばあちゃんがゆっくり立ってきて、


 「これはこれは。あづさどのではござらぬか。おかえりなさいでござるよ。」

ユーモアたっぷりに声をかけながら、にこにこと中に入れてくれるの。

 

でも、この日はちがった。


 リビングにおばあちゃんの姿が見えない。外から見ると家全体がしんとしていた。


 「ただいまでござる・・・。おばあちゃんもおるすでござるか。」


 中庭の縁側に腰かけて、あづさは背中からランドセルをおろした。


 お母さん、おつかいかなぁ。おばあちゃんはきっと、眼医者の金子先生のところでおしゃべりしておそくなってるんだ。いつもそうだもの。

 

お母さんの帰りを待っているあいだ、小さな庭のむこう側から、公園の前を横切る道の先にキャベツ畑の農家のおじさんの姿が遠くに見えた。

 きょうの仕事を終えておうちに帰るのかな。おじさんの影が道の端っこまで長く伸びていたけれど、すぐに見えなくなった。


 もうすぐおひさまがかたむく時間だ。


 お母さん、おそいな。


 おうちのみんながお出かけしていて、だれもいないことはこれまでもあった。


 そのたんびにあづさはこの中庭の縁側で待ちぼうけをくらって、そのうち帰ってきただれかに口をとんがらかす。

 「早くわたしにも鍵をくれたらいいのに。」







| 『ステラ』 琉球新報児童文学賞受賞作品 | 06:41 | comments(0) | - | |
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