CALENDER
<< June 2017 >>
SunMonTueWedThuFriSat
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 

SELECTED ENTRIES
ABOUT
CATEGORIES
COMMENTS
TRACKBACKS
LINKS


<< 第21回琉球新報児童文学賞  『ステラ』 (4) | main | 第21回琉球新報児童文学賞  『ステラ』 (6) >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています





| - | | - | - | |
第21回琉球新報児童文学賞  『ステラ』 (5)

ゆみた2.jpg
photo by 由美太っ♪

運動会が終わり、いつまでもカナカナカナ・・・と鳴いていた夕方のひぐらしの声がいつの間にかすっかり虫の声に代わり、涼しい風が吹き始めるようになったころ。

 桜の葉っぱが少しづつ色づきはじめたころ。あづさの季節も変わろうとしていた。

 
 「ただいま」の声とともに帰り着いた日。
 
 あれ?玄関のドアが開かない。あづさの胸いっぱいに不安が広がった。
首から下げた鍵で玄関のドアを開けて中に入る。


 「ただいま。お母さん、おばあちゃん?」


 返事はなかった。


 あづさの予想通り、おばあちゃんのベッドはからっぽだった。



 
 あの日、秋のはじまりの日。


 突然おばあちゃんがいなくなって、それからあづさたち家族のまわりはまるで木枯らしが吹いたようにあわただしくなった。


 おばあちゃんを見送る「忌中」の波が引いてあづさもおにいちゃんも学校にもどったけれど、あづさはおばあちゃんの笑顔が遠くに行ってしまったという感覚がまだよくわからずにいた。なんだか心の中がからっぽになったみたいだ。

 
 おばあちゃんがいなくなって、とっても悲しいのに涙が出ないよ、おばあちゃん。なんでだろ? 

 


 おばあちゃんの四十九日の夜、お父さんがみんなを呼んだ。
 一通の手紙がテーブルにそっと乗せられた。おばあちゃんからの手紙だった。


 「感謝状   たもつどの みえこどの みずきどの あづさどの 

今年は春からいろんなことがありましたね。まさかおばあちゃんが病気なんかするなんてね。本人が一番びっくりしています。

 
 病気はいやだけれど、でもおかげでいろいろ準備することが出来てよかったわ。

 
 この家族のおかげで毎日楽しい日々を過ごすことができました。本当にありがとう。そこでね、最後にみんなに感謝の気持ちをこめてサプライズを残すことにしました。

 それぞれにひとつづつ、おばあちゃんから感謝の景品です。おばあちゃんがいっしょうけんめいに考えた場所にかくしてあります。みんなもがんばって探してみてね。

 おにごっこか、宝探しみたいで楽しいでしょう?


 いままで、ほんとにほんとにありがとう。


 たもつ、みえこさん、みずき、あづさ。
 おばあちゃんはいなくなっても、心はずっとずっとあなたたちといっしょです。

          おばあちゃんより」


 お父さんがおばあちゃんの手紙を読み終えたとき、おばあちゃんのいたずらっぽい笑顔が家族の間に広がった。

 
 はじめてあづさは声をあげて泣いた。
 おにいちゃんも、お母さんもお父さんも泣いた。

灯り.jpg

 

 
 
 寒い冬をまたいで新しい年が来た。
 
 おばあちゃんがいない中庭のむこうの公園に桜が咲きはじめるころ、ゆっくりとおばあちゃんが残したサプライズが見つかりはじめた。


 それぞれがおばあちゃんのおもかげを探すことで、おばあちゃんのいないさびしさを埋めているようだった。おばあちゃんらしいユーモラスな場所からおばあちゃんの残した宝物が見つかるたびに、だいじな思い出が増えていった。


 お母さんへのサプライズがおばあちゃんの着物の帯の間から見つかったときには、


 「こりゃ、うっかり形見分けもできないな。まったくいたずら好きなおばあちゃんらしいなぁ。」

 
 お父さんはおばあちゃんをなつかしく想いながら笑った。


 
 初夏の日差しが真夏の熱風に変り、蝉の声が聞こえるようになっても、あづさあてのサプライズだけがどこを探しても見つからなかった。おにいちゃんもお母さんもいっしょに探してくれたし、お父さんもおばあちゃんがしまいそうな場所を考えてくれたけれど、どうしてもわからなかった。


 家族のだれかあてのサプライズが見つかるたびにあづさはなんだかさびしい気持ちになった。


 おばあちゃん、ほんとにわたしにもサプライズ残してくれたのかなぁ・・・・。




 そんなあづさの気持ちをさっしてか、お父さんが言った。


 「あづさはおばあちゃんの一番のお気に入りだったからね。きっと特別な場所があるのかもしれないよ。ゆっくり探せばいいよ。おばあちゃんとあづさのおにごっこみたいで、おばあちゃんらしくて楽しいじゃないか。」


 そうか。そうだね。あせらないでゆっくりおばあちゃんを探せばいいんだね。自分に言い聞かせるようにあづさはお父さんの言葉を受けとめた。





| 『ステラ』 琉球新報児童文学賞受賞作品 | 00:01 | comments(8) | - | |
スポンサーサイト





| - | 00:01 | - | - | |

最後、なぜか鳥肌が立ちました。。。。。

悲しすぎて涙が出なかったあずさが泣いた時
私も今うるっと半涙でおります・・・

すっごく素敵なおばあちゃん・・・
意味のある逝き方でいつまでも皆の心をしっかり支えているおばあちゃん
そこに色んな鳥肌と涙が。。。。。


あぁ・・・なんて素敵なお話なのでしょう。。。
あづさのサプライズが見つかる日を楽しみに・・・私まで心洗われております。

PEARさんの頭の中も素敵・・・(*TーT*)vvvw

| 由美太っ | 2010/06/27 3:07 AM |

PEARさん、おはようございます。
「ステラ」を読ませていただき
とても感動しました。
とっても素敵なおばあちゃんですね。
あづさちゃんの心が伝わって来て
涙しながら読ませていただきました。
あづさちゃんのサプライズが見つかる
日を楽しみにしています。
PEARさん感動をありがとうございます。
私も鳥肌がたちました。
| sakura | 2010/06/27 6:41 AM |

本当にあちらにいくことってあっけないですよね。
そのあっけなさについていけないのは残された人たち・・・

おばあさん、かなりナイスな人だなあ。
ユーモアいっぱいの置き土産なんてなかなかできるもんじゃないですよね。
ウルウルしちゃいました。
| まつぼっくり | 2010/06/27 9:18 PM |

由美太っさん

ありがとうございます
この先に待っているものはきっと
だれの手の中にもあるはずだと

そう思います
| PEAR | 2010/06/27 11:48 PM |

sakuraさん

「ステラ」読んでいただきありがとうございます
あづさとおばあちゃん
きっと多くの方がそれぞれに素敵な思い出を持ってらっしゃると思います

もう少しお付き合いくださいね
| PEAR | 2010/06/27 11:52 PM |

まつぼっくりさん

命の儚さとだからこそ切ないほどの深い愛情
で結ばれる絆

そんなものを表現できたら、と思います
| PEAR | 2010/06/27 11:57 PM |

泣けました。

振り返れば自分が小学校に上がる前、祖父が亡くなり…ランドセル買ってくれるとの約束は消滅…。

その時になって初めて祖父のいない痛み…感じたのを思い出しました。

自分はPEARさんみたく優しい心温まる文章は書けないね。…文章ってしみじみ性格が表れますね?
| 悠人 | 2010/06/27 11:58 PM |

悠人さん

こんばんは。
やさしいおじいさまがいらっしゃったんですね。
私は祖父母を知りませんから孫としての自分の気持ちもわかりませんが
きっとじーちゃんばーちゃんがいたら楽しかっただろうな、と思います。
今もきっと師匠を見守ってくれていると思いますよ。
| PEAR | 2010/06/28 12:57 AM |












ARCHIVES
☆ポチっとおねがいします↓さてさて・・?
にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
RECOMMEND
OTHERS
SPONSORED