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『金の草履』  (1)

 
Photo by  由美太っ♪


 体の奥から突き上げるような鋭い痛みがきた。

 麻子は歯を食いしばって低く呻き、この痛みの波に乗るイメージをつかもうとした。波のリズムの間隔が徐々に狭まり、ついに麻子は怒涛の波間に巻き込まれ、絞り出すように声をあげた。


 現実の自分を確認する間もなく、体の奥深く慈しんできた赤ん坊が光の中に誕生した。


 赤ん坊の力強い泣き声に、新しい命をこの体から生み出したという誇らしさと、今まで味わったことのない幸福感に包まれたとき、誰かが麻子の頬をつついた。

 


 「かあちゃん。・・・かあちゃん。」


 ささやくような智子の声が麻子を現実に戻した。
 彼女の頬に触れる手は、智子よりもう少し幼い元(はじめ)のものだった。


 生まれたてのずっしりした赤ん坊だった智子。
 今、目の前にいる智子は、おかっぱの前髪が伸びて額から目にかかり、その髪をかきあげながら心配そうに麻子の顔をのぞいている。元は感情に正直に麻子の頬をしきりになでる。

 

夢か。


 初めて生まれたての智子をこの手で抱いたときの感触が、まだ残っていた。

 

薄暗い壕の入口近くで、麻子は土の壁にもたれかかって夢をみていた。


 「かあちゃん、苦しそうな息をしてた。大丈夫?」

心配そうに小さな声でささやく智子の頭を右手でなで、左手で元の手を握りしめて頬ずりしながら、


 「大丈夫よ。ほらね。智子も元ももう少し寝なさい。智ちゃん、こっちおいで。」


 無防備で幸せな夢を反すうする暇もなく、麻子の中に子供を守って楯になる感覚がすっくり戻ってきた。



 戦が始まるまで、腎臓を患ってぱんぱんに腫れていた智子の足はすっかり細くなり、ふくらはぎのあたりに小さな筋肉をつけ始めていた。北に向かっての逃避行が始まった頃、しきりに足の痛みを訴え、歩き渋っていた智子が今は元と手を繋いで黙々と歩く。


 壕の中の狭い空間で智子の体を傍に引き寄せ、彼女の足をさすってやりながら元の頭をひざの上で抱え、粗末な抱っこひもで胸に貼りつく百合子の寝顔を確認して、麻子もまたまどろみの中に落ちていった






| 『金の草履』 | 00:05 | comments(3) | - | |
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| - | 00:05 | - | - | |

金の草鞋っていうから、年上女房の話かとおもっちゃった。(^^ゞ

戦、壕?百合子って誰?
いきなり、なにかが始まるのですね?
| かおり | 2010/08/02 9:24 PM |

もとい草鞋ではなく草履でした。ゴメンm(_ _)m
| かおり | 2010/08/02 9:28 PM |

かおりさん

わらじじゃありませんよ〜
短編小説『金の草履』、初公開です

しばらくお付き合いいただけたらうれしいです^^
| PEAR | 2010/08/02 11:29 PM |












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