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オキナワン タイクーン 3 「夏の足跡」 vol.4

                       

あの事故からどのくらい時間がたっただろう。エムの足は少し引きずるようにはなったけれど、順調に回復していった。

 

「エム、ずいぶん元気になったね。おまえ、どこから来たんだい? 首輪をしてるからお父さんは飼い主を探さなきゃいけないって言うけど、まだもう少しエムはぼくんちの子でいいよね。」

帆久人のあたたかい手はいつもやさしくエムの頭をなでた。

 

あの夜、塾の帰りに道路の端っこに横たわる猫を見つけた彼は、自分の上着で小さな命をくるんで急いで家に運んだ。

「後ろ脚の骨折がひどいな。回復するには少し時間がかかるかもしれないけど、命は大丈夫だから安心しろ。」

と言いながらお父さんは処置室に入って行った。

 

帆久人が拾いあげて、お父さんが救った命。その夜から帆久人にとってエムは特別な存在になった。

 

時間とともに動物病院の新しい環境にも溶け込んで、待合室の出窓がエムの指定席となった。

 

お父さん先生の診療所は、車1台がやっと置ける駐車場横から10段ほどの木の階段をとんとんと上がったところに入口があった。扉を開けるとカウベルがカランコロンと響き、そこが受付と待合室のスペースになっていた。

ちょうど出窓から外を見下ろすと、中二階ほどの高さの窓から、春には小さな白い花をたくさんつける雪柳やアジュカの植栽、季節終わりの紫色のルリギクの花が咲いているのが見えた。

 

エムが来た年の秋がいつのまにか深くなっていった。

診療所の向こうに見える街路樹の木々の葉が時間とともに黄色や朱色に色づき、それがはらはらと葉を落とすのも、外の景色が白く空気が鋭くなっていくのも、この待合室の窓から眺めて知った。

この場所は、大事な家族を連れて静かに語りあう人々の会話が季節を彩って、ぬくもりを感じるエムのお気に入りになった。

 

大きな出窓のガラス越しに、いつでも出入り自由な空間が広がっている。

ガラスの向こう側に手を伸ばせば、自由はいつでも手に入りそうだった。太陽が西に傾き、あたり一面きれいなオレンジ色の夕焼けもこの窓からはっきりと見えた。あの日追いかけた夕日も前よりずっと近くに見えた。

 しかしエムは一度も外に出ようとはしなかった。

毎日この出窓の指定席に座り、どこかにつながるあの道の向こうを眺めて日々を過ごすようになった。

特に寒い冬の日はセスやルリにぴったりくっついて、時には帆久人の腕に抱きかかえられて丸くなって眠った。今まで知らなかった仲間たちとの触れ合いや、帆久人やお父さん先生の病院の優しさに囲まれてエムは忘れていった。

 

どうして自分は「エム」なのか。ほんとは自分はだれなのか。








 






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